五十肩や肩こりは特に中高年で訴える人が多く、厚生労働省による国民生活基礎調査の概況(平成28年)の世帯員の健康状況では、肩こりは自覚症状において男性で第2位、女性第1位に上がるなど沢山の方が頭を悩ませている症状と言えます。

そこで、五十肩、肩こりの違いやその原因と対策を分かり易く整理してみたいと思います!
五十肩とは?

医学的には五十肩という疾患は存在せず、世間において使用されている俗称であると言われています。
肩・関節の治療で有名な信原病院では、五十肩を「中年以後に発生する肩関節の疼痛(いたみ)と拘縮をきたす疾患を指す」と定義しており、
その中身は、肩関節周囲の炎症や損傷により肩の周辺の圧力に起因する痛みや違和感、痛みによる不動で生じる拘縮(関節が硬くなり動きが悪くなる現象)などの症状を生じる疾患の総称であると考えられています。
これらは原因不明のものも多いですが、「腕の使いすぎ」や「急激に強い力が加わるような作業(バケツで水をまく、畑を耕すetc.)」、あるいは「転倒・転落」などが一因となり生じることも多いと感じます。

医療機関を受診し、受傷機転(いつ、どこで、どうして)がわかっている場合には説明できるようにしておくと診察がスムーズに行えるので整理しておきましょう。
インターネットには肩こりや五十肩解消のための運動が数多く紹介されていますが、腱板損傷や肩関節周囲炎、上腕二頭筋長頭筋炎の急性期の段階では運動自体が症状を悪化させてしまう恐れがあるため、「ズキズキする痛み」や「痛みで夜中に目がさめる(夜間痛)」、「腕が上がりにくい」ときには運動すると帰って症状を悪化することが考えられるので注意しましょう。

痛みが治らない時は無理をせず、早めに医療機関で受診することをお勧めします。
特に、腱板損傷では無理をして腕を使い続けると損傷部分が広範囲に広がり、手術が必要になる場合もあるのでくれぐれも無理は禁物です。
肩こりとは?

肩こりは主に僧帽筋上部線維や棘上筋などの筋肉のコリや炎症、鈍痛や違和感を指すことが多いと考えます。
事務作業、勉強、パソコン操作など長時間同じ姿勢で行う作業や、精神的ストレス、肥満や猫背、頸部椎間板障害など要因は多数あり、なかなか一つに絞ることが難しい症候でもあります。
医療機関での治療は?

症状に応じて、医学的な処置は異なってきます。
例としては、押して痛みを感じる(圧痛)ところに局所麻酔薬を注射したり、筋肉の緊張を緩める内服薬の処方、温熱療法や電気刺激療法などの物理療法といった保存療法が行われます。
また、リハビリテーションとして、急性期には肩のリラクゼーションや、拘縮予防のための体操、日常生活での注意点の指導、急性期が過ぎれば痛みに応じて徐々に関節を動かす可動域練習などが主です。

筋肉や腱の断裂がある場合には手術を要する可能性も。
予防と対策
腱板損傷や肩関節周囲炎を予防するためには、「仕事や運動が過大になっていないか」、「十分な休憩・休息が取れているか」など負荷の調節が必要です。

筋肉や腱、靭帯などは負荷に対応する力が年齢とともに弱くなっていき回復も遅くなるため負荷をかけないように気を付けておきましょう。
サポーター
サポーターの使用に関してはネット上で様々なものが市販されていますが、amazonなどで多く購入されているものは胸椎の姿勢を矯正するもので、猫背が原因であればある程度効果があると考えられますが使いすぎによる弊害が出ないようコントロールする必要はあると感じます。
できるのであれば、サポーターなしに姿勢がコントロール出来るようになることが理想ですが、用いるのであれば肩を圧迫するようなサポーターに関しては使用して効果を確認しながら使用するのが無難だと思います。
簡単な運動
肩こりの原因は様々ですが、長時間の同一姿勢が要因と考えられる場合には痛みを起こさない、あるいは増強させない程度の適度な運動が簡単な解決方法になると思います。

ここで簡単な運動を3つ紹介していきますね!
1.前に両手を突き出し、大きな「前にならえ」を行う。
この時出来るだけ手を前に突き出して静止する。
2.腕を体の外側へ90度開く。
肘を90度曲げて手のひらは下向きにして静止する。
3.2の状態から掌が前向きになるように腕を回転させる。
肘を曲げて万歳をしたような格好で静止する。

運動後に肩が軽くなる、スッキリするなどの効果があれば継続して行いましょう。
少しスペースがあればどこでも行えると思うので、少しずつ、効果を確認しながら無理のない範囲で行っていき、くれぐれも痛みや違和感が出るような場合には無理をせず中止しましょう。
運動器カテーテル

最近のトピックスとして、運動器カテーテルという治療法があります。
関節周囲の炎症に伴って生じる細かな微小異常血管(もやもや血管)を塞栓することにより、痛みを消失または軽減させる治療で、手首の血管から「もやもや血管」近くまで管(カテーテル)を挿入し、薬剤でそのもやもや血管をふさいでしまうといったものです。
血管と痛みを感じる神経は並走しており、もやもや血管の周りにも沢山の神経ができていると考えられ、その神経に栄養を送っている血管を塞ぐことで神経の機能を停止させることが狙いではないでしょうか。

治療時間も一時間程度で、日帰りも可能なようです。
肩に限らず、体に慢性的に痛みを抱えている方にとっては効果が期待できるかもしれないので、「運動器カテーテル」を行っているか問い合わせてみると良いでしょう。
まとめ

五十肩、肩こりの違いについて見てきましたが、それぞれの違いがお分かりいただけたでしょうか?
こうして見てみると、それぞれの症状の中身は全く別物だと感じることができますね。
原因や治療法も異なるため、診察もせずにご自身の思い込みで無理な運動や対策で悪化させないようにしましょうね!