肩の痛みには大きな病気が隠されていることがあります。
ただの肩こりではないかと、思い込むことはなるべく避けるようにしないといけません。
「その肩の痛みが、肩こりなのか?」「実は別の原因での痛みではないのか?」
それぞれの違いを詳しくみていきましょう!
肩こりとは?
「肩の痛み」と「強い肩こり」を同じものだと考える人も多いようですが、実は全く違います。
肩こりの痛みは「首から肩にかけて」に限局されるのに対し、「肩の痛み」はその原因によって、より広い範囲に影響します。
「肩こり」とは、首から肩、背中にかけて広がる筋肉、「僧帽筋」が硬くこわばることによる痛みや不快感の総称です。
しかし、肩こりの原因は「僧帽筋の不調」だけではなく、上半身の筋肉全てが密接に関係していることも多く、その際は上半身の筋肉の総合的なケアが必要となります。
皆さんご存知のとおり、血液の役割は、体中の細胞に栄養を運び、老廃物を取り除くことです。
筋肉が強張るとその部分の血行が悪化し、細胞の栄養補給と老廃物の排除が滞ります。
肩こりとは僧帽筋に上記の症状が表れた状態を指します。

すなわち、肩こりを解決するためには、僧帽筋及び上半身の筋肉の緊張の緩和し、血行を促進する必要があります。
肩こりか、それ以外の「肩の痛み」か、迷った際は、以下の方法を試してみましょう。
これらを実行して痛みが消えたのならば肩こりである可能性が高いです。
肩こり解消法~運動編~
肩こりの解消法には大きく分けて「ストレッチ」と、「筋肉のケア」の2種類が存在します。
ストレッチはその名のとおり、筋肉を動かす、あるいは伸ばすことにより筋肉の緊張を緩和し血行を促進します。
ストレッチ
「どこの筋肉が伸びているか」を意識しつつ行うことにより、よりストレッチの効果を高めることができます。

スピーディーに行う必要はありませんので、無理の無い範囲でリラックスして行いましょう!
首を伸ばすストレッチ
まずは首の筋肉を伸ばすストレッチです。
首を前後左右、各20秒ずつゆっくりと倒しましょう。
手を使う際は力を入れすぎないように注意して下さい。
肩をすくめるストレッチ
僧帽筋を緩めるストレッチです。
方法は非常に簡単、2~3秒かけてゆっくりと肩をすくめ、その後ストンと落とすだけです。
目安:10回程度
背伸びストレッチ
直立して、肘を伸ばしたままゆっくりと両手を挙げ、「バンザイ」のポーズをとります。
その際は指先と首が真上に引っ張られている様子をイメージしましょう。
その後、ひじを伸ばした状態で腕を横に下ろします。
目安:10回程度
肩回し
肘をまっすぐ伸ばす、あるいは直角に曲げ、肩関節を意識して腕をゆっくりと回します。
その際勢いをつけ過ぎると筋肉を傷める原因となりますのでご注意ください。
目安:前回し、後ろ回し共に15回程度
腰ひねりストレッチ
椅子、または地面に座り、「お尻を動かさないまま」、腰を回して、振り向き、その姿勢を10秒キープします。その後、先ほどとは反対の方向でも同様のことを行い、これを1セットとします。
目安:5セット程度
筋肉のケア
筋肉のケアには以下の方法が存在します!
マッサージ
筋肉に圧力をかけることによって緊張をほぐし、血行を促進します。

「強い力で押すほど効く」というイメージをもたれがちなマッサージですが、過度な加圧は怪我の原因となるため控えましょう。
方法は以下のとおりです。
首の後ろもみ
首の後ろの骨に沿い、上から下へじっくりと押してゆきます。
目安:3回程度
首の付け根もみ
肩と首の境目(首の付け根)をゆっくりと押して、5秒間キープ後、再びゆっくりと指を離します。
目安:5回程度
肩ほぐし
手のひら全体を使い、両肩の筋肉を揉み解します。
目安:片方1分程度
腕ほぐし
手のひら全体を使い、もう一方の腕全体を揉み解します。
目安:片方1分程度
鎖骨ほぐし
鎖骨の下側にあるくぼみを、人差し指と中指を使い「くるくる回すように」揉み解します。
仕上げ
最後に首や肩をゆっくりと回して終了です。
東洋医学や民間療法を試してみよう
肩こりに即効性を期待できる指圧(ツボ押し)、鍼(はり)、灸(きゅう)をご説明します。
これら3種は、体中に存在する「様々な物質やエネルギー」を運ぶ通り道、「経絡(けいらく)」と、その中継地点「経穴(けいけつ)」、すなわち「ツボ」に刺激を与え、自然治癒力を高め、症状を改善します。
指圧(ツボ押し)
指圧はその名のとおり指を使い経穴を刺激する技術です。

ツボの種類によって押す回数などに多少の差は存在しますが、共通のポイントは以下のつだけです。
ツボに対して垂直に押す
斜めに押すと経穴への刺激が不足する場合があります。
ゆっくり押す
素早く押すと筋肉を傷める原因となります。
気持ちのいい強さで数秒キープ
マッサージと同様に強い刺激は怪我につながります。
あくまで心地よい強さを数秒間キープするだけで十分です。
ゆっくりはなす
最初と同様に、素早い動きは筋肉を傷める原因となります。
鍼(はり)
鍼治療は非常に細い金属製の鍼を経穴に刺すことにより刺激を与える技術です。

鍼治療は高度な知識と技術が要求されるため、専門家である「はり師」または「医師」しか施術を許されていません。
鍼灸院や病院へ行く前に手軽な治療を試したい方は、小さなシールに1~2mmの針がついた「円皮鍼(えんぴしん)」、通称「シール鍼」を試してみましょう。
円皮鍼はドラッグストアや、ネット通販などで購入可能です!
灸(きゅう)
お灸はモグサ(ヨモギの葉の裏に生えている白い毛を集めたもの)を皮膚の上で燃やし、経穴に刺激を与える技術です。
お灸の据え方は時代と共に大きく変化しており、過去には火傷跡が残るほどに肉体への負担が大きいものも存在しましたが、現在では廃れています。
現在、主流となっているのはお灸と皮膚の間に、中心に穴を開けた台をはさみ、その穴からモグサの成分と熱を間接的に伝える「台座灸」です。
こちらも、台座灸はドラッグストアやネットショッピングで購入することができます。
漢方
「病気というほどではないけれど体調が優れない。」
漢方はそのような肉体の不調の改善に特に効果的です。
漢方の考え方や診断基準は西洋医学と異なっており、市販薬や一般の病院での薬が合わなかった方にもおすすめです。
興味を持たれた方は、お近くの漢方外来や漢方薬局を尋ねてみると良いでしょう。
かっさ
中国由来の民間療法で、手のひら大の特殊なプレートを使って皮膚をさすり、老廃物や汚れた血を循環させます。
例えるならば、血管というホースに溜まった汚れ押し流す行為といえるでしょう。
「かっさ」に痛みは全くありませんが、施術後には、さすった部位に赤みが浮き出ます。
赤みは数日で引きますが、かなり目立つため、大切な用事の前には控えた方が良いでしょう。
日常生活を見直そう
肩こりは日常生活における様々な要素が原因となって起こります。
姿勢の悪さ
猫背は首、肩、背中、腰の筋肉に負担をかけます。
運動不足
筋肉を動かす機会が少ないと、血行が悪化してしまい肩こりになりやすい体質になります。
水分不足
水分摂取を疎かにすると血液がドロドロになり、血行が悪化します。
ストレス
過度なストレスを受けると、首や肩の筋肉が緊張し、その状態が続くことによって肩こりが起こります。

慢性的な肩こりに悩まされている方は、日常生活を見直しましょう。
上記の方法を全て試しても改善しない、あるいは下記の症状が出ている場合、あなたの症状は「肩こりではない」可能性が高いので放置しないように気を付けておきましょう。
肩こりと区別したい肩の痛みとは?
肩こりと違う症状として気を付けたいのは「腕の外側が痛む」ことが多いという点です。
腕の神経は肩を通っているので、肩に炎症があっても、腕の外側に痛みが現れるというのがその理由です。
また、眠っている時は、肩を無意識に動かしてしまうため、痛みが続きやすく、眠れないことが多いようです。
痛みの程度も「突然激しく痛む」などの強い症状がみられやすく、日常生活にも支障が出てきます。

では、肩こりと区別するべき「肩の痛み」の原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
けん板断裂
肩甲骨と腕の骨をつないでいる「けん板」と呼ばれる薄い筋肉に穴が開いて「けん板」が腕の骨から剥がれた状態になる病気です。
穴が開くとその部分に炎症が起きて、痛みが生じます。
穴が大きければ痛みが強いというものではなく、小さくても強い痛みが出ることもあります。
原因は、肩関節の使い過ぎや転倒などです。

整形外科を受診して、MRIや超音波の検査を行えば、容易に診断できます。
石灰けん炎
「石灰けん板」は、けん板に石灰が沈着して炎症が起こる病気です。
この場合も沈着した石灰の量と、痛みの強さは比例せず、石灰の量が少なくても痛みが強い場合があります。
40~50歳くらいの女性に多いとされており、女性ホルモンが関与しているのではないかとも言われています。
X(エックス)線検査において、けん板自体は画像には映りませんが、石灰は映りますので、これにより診断することができます。
五十肩
肩関節は「関節包」という袋状の膜につつまれており、この「関節包」に炎症が生じるのが「五十肩」です。
原因はよくわからず、名前のとおり50歳代が発症のピークではありますが、30~70歳代と幅広い年代で起きる病気です。
進行すると見つけられるようになりますが、初期の状態では、画像診断で異常が見つからないことが多く「症状はあるが、他の病気ではないので、たぶん五十肩なのだろう」という診断をされることが多いと言えます。
まとめ
肩の痛みが続いているなら、整形外科を受診して、その理由を明確にすることが大切です!

症状は似ていても、それぞれ対応が違うため、自己判断で、勝手な対処法を行ってはいけません。
まれではありますが「関節リウマチ」や「上腕二頭筋けん炎」などの他の病気が原因の場合もあります。
受診の際には「今現れている症状」「いつから、どこに、どのような痛みが現れたかなどのこれまでの経過」などを詳しく医師に伝える必要がありますので、わかりやすいようにメモなどにまとめておきましょう!!